企画シンポジウム
「どうする草地の施肥管理 -草地・飼料作物の施肥管理技術 進化への展望-」
企画責任者 :三枝俊哉(酪農学園大学)
開催日時:3月27日 9:15~12:15
開催趣旨:わが国の畜産における飼料自給率は25%で、内訳は粗飼料77%に対し、濃厚飼料は12%にとどまる(2019年度)。また、肥料原料のほとんどは輸入に依存している。この生産基盤の弱さは、近年のコロナ禍やロシアのウクライナ侵略に端を発する食料、資源、エネルギー需給の世界的混乱によって、一層強調されて国民に認識されるようになった。2008年以来過去最大規模の肥料費の値上がりは、農家経営を厳しく圧迫し、行政の対応も急がれている。
北海道の草地では土壌診断や有機物施用に基づく減肥対策が整備されているが、これによるコスト節減効果は30%程度という実証報告もあり、2008年や本年のように1.5倍を超える規模の価格変動には対応しきれていない。維持管理段階の採草地に対する施肥技術体系は、土壌診断技術が1990年、有機物施用による減肥技術が2004年におおむね確立され、その後大きな改訂がない。一方、飼料用トウモロコシについては北海道で極早生品種と密植栽培体系の開発が露地栽培面積の飛躍的拡大をもたらし、これに対応した新たな施肥体系が近年確立された。そこで、本シンポジウムでは、現体系の確立に携わった研究者に今後技術を進化させるための展望を述べていただき、さらなる施肥の合理化をすすめる研究の端緒を開きたい。また、真に施肥の持続性を高めるには、施肥の合理化だけでなく、肥料原料の国内循環が不可欠である。堆肥の広域流通や家畜ふん尿からの養分回収技術の普及に向けた議論もふまえ、草地・飼料作における持続的な施肥管理技術の開発研究を展望したい。
プログラム:
1.はじめに: 三枝俊哉 (酪農学園大学)
2.どうする牧草
1)施肥標準の進化に向けて:岡元英樹 (道総研酪農試験場天北支場)
2)土壌診断に基づく施肥対応の進化に向けて:三枝俊哉 (酪農学園大学)
3)有機物施用に基づく施肥対応の進化に向けて:松本武彦 (秋田県立大学)
3.どうする飼料作物
1)飼料用トウモロコシへの施肥技術(北海道)のこれから:八木哲生 (道総研中央農業試験場)
2)長大飼料作物への施肥技術(本州以南)のこれから:出口 新 (農研機構東北農業研究センター)
4.どうする養分循環 :荒川祐介 (農研機構九州沖縄農業研究センター)
5.総合討論